ニューヨーク護摩法要と講演 2001年

世界平和への霊的浄化 テロリズムによる全世界の犠牲者追悼

2001年10月20日午後5時半(現地時間、以下同じ)、ニューヨーク市マンハッタン北部にあるリバーサイド教会において、桐山靖雄管長を導師に戴き、「解脱護摩」(火のミサ)による「世界平和への霊的浄化・テロリズムによる全世界の犠牲者追悼・ニューヨーク護摩法要と講演2001」が行なわれました。テロ犠牲者追悼の法要として、日本の仏教教団が単独で行なうのは、これが初めてです。
2001年8月の月例祭において「阿含宗が世界を救わなくてはならない時期が来た」と宣言した桐山管長は、ニューヨークでの「解脱護摩」修法を発表し、キリスト教圏初の解脱護摩となることを明言しました。1985年、バチカンを訪れたとき、サンピエトロ大聖堂で「火のミサをせよ」と呼ばわる預言者ヨハネの声が響いたことを著書『愛のために智恵を 智恵のために愛を』で明らかにしています。
そこに起きた、米国中枢同時多発テロ。9月11日の早朝(現地時間)、アメリカの象徴であり世界の情報の中心であったニューヨークの世界貿易センタービルが崩壊し、世界情勢は危機的状況へと追い込まれました。
管長猊下は、全世界のテロ犠牲者の諸精霊を供養し、霊的浄化による平和を招来するために解脱護摩を献じようと、10月16日、9日間の日程で敢然とニューヨークに発ったのです。
この勇気ある桐山管長の行動に応えたのか、昨年、電話による取材であったニューヨークタイムズの記者の取材は、直接の記者インタビューとなり、法要当日、取材内容は同紙の宗教面に掲載され、阿含宗の理念が再びニューヨークタイムズを通じて世界に配信されました。
「法要が第一にもたらすのは、深い悲しみを感じているニューヨークの人々の心に平安と癒しを与えることです。護摩法要とは死者にも生者にも平和をもたらす力があるのです」

この記事を見て飛行機で五時間かけてかけつけた人もいました。入場を待つ行列は、広大なリバーサイド教会の建物を軽く二周し、参拝者数は、教会開設来5000人以上にも上りましたが、消防法により、約半数が教会を後にせざるをえなかったのです。
一方、アメリカの会場の他に日本国内46か所、海外4か所の会場でも「同時大祈願会」として約12000人が、550万本の護摩木に祈願して参加しました。
「阿含の護摩を世界の護摩に」
このスローガンの下、世界に発信された阿含の護摩は、宗教情報系通信社、宗教・教育系テレビ局PBSでも紹介されました。全世界に悲しみを放ったニューヨーク。この地に阿含の聖火が燃え、その悲しみを抱きとって、救いと希望が世界に向かって発信されたのです。

会場のリバーサイド教会の外観。1929年に完成。バプティスト派に属しながら、宗教・宗派・人種を超えた活動を行っている

 
 

世界貿易センター崩壊現場で大九字を切る

護摩法要前日の10月19日、午後1時半、マンハッタン南部のウォール街に、法務部職員を従え赴いた桐山管長は、9月11日の米国中枢同時多発テロで惨劇の現場となった、アメリカの象徴・ニューヨーク貿易センタービル跡(グランド・ゼロ)を視察しました。厳重な規制が未だしかれており、現場には人も車も近づくことはできません。現場に近接のウォール街の一角にやっと車を止めることができたこの日、桐山管長は崩壊現場近くまで歩いて向かいました。
テロ発生から一か月以上が経過したにも関わらず、燃え続けているセンタービル跡。消火作業の水しぶきがどこからともなく飛来し、舞い上がる粉塵で霧がかかったように空気が白んでいます。

被災地を一目見ようと集まった人々の波。救援作業もままならず、残骸の中に残された何千という犠牲者の完全収容もまだでした。突如として襲った永別、愛する家族、肉親を失った悲しみが、崩壊現場にあふれていました。その中を進む桐山管長は、ビルの谷間から見え隠れする現場を見すえて、渾身の大九字を切り、静かに手を合わせました。

「仏陀釈尊の成仏法なくして世界・地球は救えない、カルマを断つことはできない」

グランド・ゼロを見つめ続ける管長猊下の眼差しには、翌日に控えたテロ犠牲者法要への思いが深まり、世界平和実現への命がけの決意がみなぎっていました。

10月19日、世界貿易センタービル崩壊を視察した桐山管長は、瓦礫と化したビルに向かい、渾身の大九字を切った

 
 

宗教を超えて深き瞑目のうちに祈りあう

明けて10月20日午後4時半の開場30分前、教会の建物を列が巻いていた。二周にもなる人の列は5000人を越えていました。
 ニューヨークをはじめ近郊のニュージャージー州からハドソン川を渡り、バージニア州などから、法要当日に法要開催記事が掲載された「ニューヨーク・タイムズ」をはじめ、情報紙「ビレッジ・ボイス」、仏教雑誌「トライシクル」に載っていた告知広告を見て、全米から駆けつけていました。
9月11日以来、アメリカでは犠牲者の追悼集会が各地で開かれている中で営まれた、阿含宗の解脱護摩によるテロ犠牲者の追悼を兼ねた「護摩法要と講演2001」。
仲間と来たという男性は、ダイレクトメールで届いたチラシを手に語った。「9月11日の火は破壊の火だった。今日の火は人の心を癒す、世の中を浄める火だ。人種、宗教を超え、祈りを通してみんなが一体になることが大事だ」

席についた参拝者は、受け取った白封筒「プレイヤーキット」の中の寄金参加申込み書をはじめ、護摩木に記入しはじめた。護摩木回収の修行者が持つ朱塗りの平盆は、あっという間に、アルファベットで書かれた護摩木で山積みになりました。
午後5時半、西日を受けて輝くステンドグラスに描かれた聖書の一場面、一場面が万華鏡となって鮮やかに教会を包みます。阿含宗修験太鼓一統と藤舎貴生氏の笛との共演による、本法要に献じられた藤舎呂悦氏作曲の「風打」の響きで法要は始まりました。
法務局長・深田靖阿小僧正が鉦を打ちつつ先導する入堂行列の中ほど、リバーサイド教会のウィルソン師と桐山管長が、ともに祭壇へと進みます。
壇上に、赤や黄が綾なす司祭服のウィルソン師と紫偏衫の桐山管長が並び、ウィルソン師が管長猊下と祈りをともにする光栄に感謝しつつ聖書の一節を示して献辞を捧げました。

「地上に平和あれ、それは私から始めよ。
地上に平和あれ、それは予め意図されている私たちの両親や兄弟としての神とともに私たちは存在している。完全なる調和の中で私たちをともに歩かしめよ。
平和は私から始めよ。それはいまこの瞬間からである。
私たちはすべての行動において、平和の歌を合言葉とすれば、すべての瞬間は永遠に平和のうちにある。
地上に平和あれ、私たちはすべて神に祈らねばならない。平和は私から始めよ」

黙祷を捧げられる管長猊下。キリスト教と仏教による祈りが一つとなります。
両師は深い低頭ののち、ウィルソン師は壇を下り、桐山管長は登高座へと向かいました。
午後6時、桐山管長がテロ殉難者のすみやかなる解脱と永遠の安らぎを祈る表白を奏上、やがて白浄の聖火が一切を救う希望の火となって護摩壇から立ち昇り始めました。

護摩法要後は、阿含宗彌榮神授雅楽部による鎮魂の「人長舞」と繁栄を祈る「胡蝶」が奉納され、鎮魂の神楽歌・人長舞で米国中枢同時多発テロの犠牲者を慰霊し、胡蝶は華やかな舞を以て、平和と繁栄の祈りが捧げられました。

祈りと癒しを求めて集まったニューヨーカーの列は開場前に教会を二重に取り巻いた

リバーサイド教会のウィルソン師(向かって左)と桐山管長。桐山管長の護摩法要に先立って、ウィルソン師が聖書の一節を引いて平和への献辞を捧げた

リバーサイド教会に高々と上がった解脱護摩の聖火。祭壇上の十字架と真正仏舎利尊、大聖火が三位一体の力を示してテロ殉難者の諸精霊を永遠の安らぎへと導く

 
 

講演「束縛からの心の解放」で究極の癒しを示して

彌榮神授雅楽部の奉納に続いて、ザ・インターフェイスセンター・オブ・ニューヨーク創設者ジェームス・パークス・モートン師が桐山管長を講演者として紹介しました。
モートン師は護摩法要を「ここニューヨークでそして実際、世界中でわれわれの姉妹や兄弟たちが大きな破壊を被りました。この破壊はまだ終わっていません。私たちの癒し、再建、再生のために、そしてまさに世界全体のために、この浄化の儀式がとても大切なのです。それは宗教の重要な部分です」と総括し、桐山管長を次のように紹介しました。
「管長は、私たちが知っておくべきたいへん大切な別の面をお持ちであります。それは、変革すること、ものごとをよりよい方向に導くこと、そして慈悲の営みに対する管長の深い献身についてです」
さらに、桐山管長の数々の国際支援活動を紹介したモートン師は、「親愛なる皆さま、本日の礼拝をしめくくる講演として偉大なる管長をお迎えし、ご紹介できることをたいへん光栄に思います」と、桐山管長を教卓へと導きました。
「ニューヨークの皆さん、お久しぶりでございます。丁度、一年振りでお目にかかります」。桐山管長の呼びかけの声が、リバーサイド教会に響きわたりました。

「9月11日」。この日以来、世界は一変した。その日までともに生きた人々の温もりをいまは感じることはできない。米国中枢同時多発テロの悲劇を悼む桐山管長は、静かに、全米から訪れた参拝者を勇気づけます。「悲しみを感じる心があるからこそ、豊かな喜びもまた感じることができるのです」。多様な感情を受容する心が持つ可能性の示唆し、さらに、映像化した『般若心経瞑想法』を通して、悟りに至る瞑想を具体的に示しました。参拝者の中にはスクリーンに映し出された瞑想の作法に従い、印を組んで瞑目する姿も見えます。  祈りと瞑想が人を救い、世界を救うと訴える桐山管長。言葉だけに終わらない、平和実現の決意を次の言葉に込めて表明しました。「世界平和の基本は、すべての人の真の愛と最高の智慧から築かれます。世界中の一人ひとりが平和になり、世界中の家庭一軒一軒が残らず平和にならなければ、世界平和ではないのです」。

「管長猊下のお護摩を拝し、自分の中で眠っていたなにかが呼び起こされたようでした。自分の心が炎の中に入り込んでいくようでした。地球は一つ、世界は一つであると感じ、セレモニーに参加して世界中の人々が平和を願い、作りあげていくことができると感じました。テロの恐怖をよいエネルギーに変えていただき、喜びを感じることができました」
「いままで見た中で、一番美しいすばらしいセレモニーでした。自分の心の奥深くに炎が届いたような感じがしました。法要に参加できてほんとうにうれしいです」
「心の平和をとても感じ、たいへん楽しむことができました。読経は非常に心が落ち着きました。いまの世の中、いろいろな不幸や悲しいことがありますが、法要に参加したことで精神的な安定を得て、本来の自分のあるべき姿、自分自身に戻していただいたような気がします」
解脱護摩に祈り、講演を拝聴した参拝者の身に起きたはっきりとした変化に世界平和実現の道標が見えました。

「束縛からの解放」をテーマに講演を行なった桐山管長は、癒しをもたらす手法として瞑想を紹介し、具体的瞑想法を映像で提示した

 
 

世界中の祈りが阿含の浄火ひとつに結び合わされて

法要会場はニューヨークだけではありませんでした。

日本では46か所の通信衛星とアゴン・ネットワークシステム受信道場が、映像を通してニューヨークに熱い祈りを送りました。日本時間の10月21日午前6時半、大スクリーンに映し出されるリバーサイド教会。ゴシック建築の荘厳な身廊に設らえられた護摩壇。登高座で桐山管長が焚く解脱護摩に、全国約12000 人が祈りを捧げました。
「阿含宗によってもたらされた祈りの文化がいま最も必要とされている宗教文化であるという思いが強く感じた護摩修法でした。ニューヨークの人々にもそのことが十分伝わったのではないかと思います。宗教的な対立を超えて世界的な絆を強くすることを、リバーサイド教会と滋賀道場の参拝者がともに共有できたすばらしい平和の祈りでした」(滋賀道場・50代男性)
「ニューヨークで、『般若心経瞑想法』を説かれた管長猊下はすばらしいと感動しました。現在のアメリカにこそ『空』の教えは必要でしょうし、それこそが世界の破滅のカルマを消滅させる的確な方法に思われました。個人の心にこそ因縁の基はあり、管長猊下がおっしゃるように、個人や家庭がすべて幸せにならなければ世界は救われないと思うからです」(メシアの館・30代女性) 海外では、台北本部、高雄支部、欧州支部、ブラジル支部で祈願会が営まれた。ブラジルは現地時間10月20日と翌21日の2日間にわたって祈願会を開催し、両日あわせて140人が参加しました。

「信仰の違いがこうした多数の犠牲者を出し、しかも戦争を引き起こす結果になったことは、はなはだ残念なことです。しかし、私たちは何世代もの時間が経つと、すべての宗教が手をつなぎ、人々をもっと近づけ、やがて全地球的な団結の時代が来ると信じています」
欧州支部はニューヨークより一足早いプレ祈願会を開催。祈願会ののちは「瞑想」で祈りを集中させました。瞑想室でライトの光線に線香の煙を以て龍神さまが現形されるなど、一人ひとりの精いっぱいの祈りが、ニューヨークに届けられました。

「一斉に祈る機会に参加できてよかったです。祈りの最中、バイブレーションと穏やかさを感じ、世界はいい方向に動いていると感じました。テロ犠牲者の安らかなることを」 台湾では10月21日、台北と高雄の合わせて300人が大祈願会で、映像はなくとも真剣な祈りをニューヨークに送った。日本の道場と同じ勤行次第で行なわれた法要は、ニューヨークの会場と見粉うほどの緊張感が漂った。
「心を一つにして祈りを捧げた非常に意義深い行事でした。遠く台湾の地にいる私たちも祈りが届くよう一生懸命勤行させていただきました。この法要により一刻も早く世界平和が訪れますように。人々が健やかな日々を過ごせますように」世界平和の「祈り」が大きな力となり、国境を越えて一つに結ばれのです。

 

聴衆の賛同を添えてテロ関連救済活動に寄金贈呈

講演終了後、米国中枢同時多発テロの被害者の救済活動を積極的に行なう団体に対して寄金が贈呈され、法要に参加した二団体に対しては桐山管長が直接、寄金を手渡しました。これにはその趣旨に賛同した、当日の来場者からも募った寄金が添えられました。

対象団体は、アフガニスタン難民を人道支援する国連難民高等弁務官(UNHCR)米国協会とイスラム教信者に対する差別や偏見をなくすための活動を続けるザ・インターフェイスセンター・オブ・ニューヨーク。テロリズムで罹災した犠牲者及びその家族や共同体に対する基金となる「9月11日基金」の三団体である。国連難民高等弁務官からはミッシェル・セルバンテス女史が、ザ・インターフェイスセンターからはモートン師と活動の中心的役割を担うティムール・ユスカエヴ氏が挨拶し、感謝と今後の活動への方針を語りました。

 

阿含の護摩からうまれる共感の縁

クリントン前大統領が祝辞

講演終了後、リバーサイド教会地下一階にあるアッセンブリーホールにて、175人が出席してVIPレセプションが開催されました。
 まず、クリントン前大統領から届いた、本護摩法要に対する讃嘆のメッセージが披露され、阿含宗の活動が多くの理解と高い評価を得ていることを、桐山管長はVIPとともに分かち合いました。

その喜びが広がる会場の中、ジョシュ・バラン氏の司会で、挨拶に立ったアジアソサエティのレイチェル・クーパー女史の紹介を受けて挨拶に立った桐山管長は、出席者を前に大目標を宣言したのです。
「昨年に引き続き、ニューヨーク護摩法要と講演を行なうことができました。現実はすばらしく、5000人もの人が訪れましたが、中にはお帰りになった人もあり、心が非常に痛みます。

いっしょにお祈りをしようと来られたお客さまに帰っていただいたことは、いっしょにご馳走を食べようと、来ていただいた人に、食事を食べずにそのまま帰っていただいたような失礼さではないでしょうか。
そこでわたくしは来年、もっと大きな聖なる護摩を焚かなくてはならないと思っています。今度行なわれる護摩法要には、100万人の祈りを集めたい。100万人の祈りの心が一つになったとき、どんな願いもかなうでしょう」

10月26日、ニューヨークタイムズ紙面に桐山管長の決意を示すニューヨークにおける柴燈護摩法要開催を宣言する全面広告が掲載されたのです。

10月26日付け ニューヨークタイムズに「感謝とお詫び」全面広告

 
 

世界に発信された阿含の理念

今回の護摩法要も、さまざまな形でニューヨークから発信されました。

ニューヨーク・タイムズに法要当日、護摩修法の案内の記事が掲載された。昨年に続く紹介記事は同じ記者の筆によるもので、記者は法要前日の19日、リハーサル中の桐山管長を教会に訪ねてインタビューを行いました。また、宗教情報系通信社の「宗教ニュースサービス社」も法要の意義を的確にとらえた記事を全米に配信ています。アメリカの公共放送で宗教・教育系テレビ局のPBS放送は、宗教ニュース番組「宗教と倫理のニュースウィークリー」のトップニュースとして、阿含宗の護摩法要を紹介、世界に「阿含宗」の理念が配信されたのです。

 
 

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